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Ayar: Children of the Sun完全ガイド

2025年10月14日発売、Osprey Gamesの新作『Ayar: Children of the Sun』は、古代インカの創世神話をテーマにした壮大なユーロゲームです。
プレイヤーは最初のクランを導き、太陽神インティと月神ママ・キヤの加護を受けながら、農業や陶芸、織物などの技術を発展させて文明を築きます。
最終的なスコアは、二柱の神のうち“より不機嫌な神”の評価によって決まるという独創的なシステムを採用。
イアン・オトゥールによる美麗なアートワークと、神話的テーマを戦略的に再構築したメカニクスが融合した、知的で美しいユーロゲームの新境地です。
序章:Ayarとは? インカ神話を体験するユーロゲームの新境地
2025年10月14日、Osprey Gamesから発売された『Ayar: Children of the Sun』は、古代インカの創世神話を題材にした中量級ユーロゲームです。
プレイヤーは最初のクランの指導者となり、神々の導きを受けながらアンデス山脈を旅し、文明を築き上げていきます。
農業・陶芸・織物・葦の束ねなどのスキルを発展させつつ、太陽神インティと月神ママ・キヤの両方の恩恵を受けることが勝利への鍵。
しかし、どちらかの神の怒りを買うと、最終スコアは“より不機嫌な神”の評価によって決まるという独自ルールが存在します。
プレイ人数は1〜4人、対象年齢は14歳以上、プレイ時間は約60〜90分。
木製コマ200個以上、パンチボード200枚以上という豪華なコンポーネントと、
イアン・オトゥールによる美しいアートワークがゲームの世界観を彩ります。
インカの神話を戦略的に再構築した作品として、2025年秋の注目タイトルです。
1. インカ創世神話を再現した世界観
『Ayar: Children of the Sun』は、南米アンデスの創造神話「アヤル兄弟姉妹伝説」に基づいています。
物語の始まりは、創造主ウィラコチャ(Viracocha)が太陽神インティ(Inti)と月神ママ・キヤ(Mama Quilla)を生み出し、
その二神の間から生まれた八人の子どもたち――アヤル兄弟姉妹(Ayar)――が世界に文明をもたらすというもの。
ゲーム内では、この神話をメカニクスとして巧みに再現しています。
プレイヤーはアヤルとともにアンデスを巡りながら、肥沃な土地を探し、技術を発展させていく。
やがて兄弟姉妹は次々と神々の試練によって姿を消し、最終的に残った者がインカ帝国を築くという物語が、
ゲームの進行とともに語られていきます。
世界観の描写も秀逸で、アートワークにはアンデスの段々畑や石造りの寺院、金細工などが繊細に描かれています。
プレイを進めるほどに、単なる戦略ゲームではなく「神話を体験する物語」へと没入していくでしょう。
2. ゲームメカニズムとプレイ構造の特徴
本作は典型的なユーロゲームの枠組みを持ちながらも、神話的要素を巧みに融合しています。
プレイヤーは自分のクランボード上で、農耕・陶芸・織物・葦束ねといったスキルを発展させ、
アヤルの移動に合わせて資源や影響を獲得していきます。
ゲームは4つの時代(ラウンド)で構成され、昼と夜のフェーズに分かれて進行。
昼は「太陽の恵み」として生産や発展の行動が中心となり、夜は「月の導き」として儀式や調和が重視されます。
プレイヤーの得点は、太陽神と月神の双方のスコアトラックで管理され、
最終スコアは“低い方”の神の評価で決まるという緊張感のある設計が最大の特徴です。
このため、一方の神に偏った行動はリスクとなり、
「太陽と月の調和」という神話的テーマがプレイ体験そのものに直結しています。
さらに、アヤルの進行ルートや、他プレイヤーとの位置関係も重要で、
単なるポイントレースではなく“文明と信仰のバランスゲーム”としての奥深さが光ります。
3. プレイヤーの戦略とゲーム展開
『Ayar: Children of the Sun』では、どの神をどれだけ満足させるかが戦略の中心です。
序盤はスキル育成や資源収集に重点を置き、中盤以降はアヤルの進行に合わせて行動を最適化していきます。
各プレイヤーはクランの特性に応じて異なる強みを持ち、誰をどの神に“仕えるか”という選択が勝敗を左右します。
例えば、太陽神に焦点を当てれば即効性のある得点を得られますが、
月神の機嫌を損ねると最終評価で痛手を受けるという“二重スコアのジレンマ”が発生します。
また、他プレイヤーの行動や神々の影響を読み合う要素も強く、
中量級ユーロでありながらインタラクションが深いのも特徴です。
リプレイ性も高く、ラウンドごとにアヤルの行動や神々の反応が変化するため、
同じ戦略が必ずしも通用しないバランス設計。
まさに“神々の気まぐれと人の知恵”がぶつかり合う、物語的かつ戦略的なユーロゲームです。
4. デザイン・アート・コンポーネントの魅力
『Ayar: Children of the Sun』のアートワークは、世界的なボードゲームアーティスト イアン・オトゥール(Ian O’Toole) によるもの。
『Lisboa』『On Mars』『Weather Machine』などでも知られる彼の繊細なデザインは、
本作でも「インカ文明の荘厳さ」と「神々の神秘性」を見事に融合させています。
ボード上には、アンデスの山並みや太陽を象徴する金色の文様、月神の静謐な銀のモチーフがバランスよく配置され、
まるで神話の絵巻を広げたような視覚的没入感を味わえます。
各プレイヤーボードには異なるクランの象徴が描かれており、
木製駒やパンチボードも丁寧な造形で、コンポーネント品質はOsprey Gamesらしく極めて高水準。
さらに、視認性と情報整理の設計も優秀で、アクションやスキルトラックの構造が直感的に理解できます。
中量級ながらコンポーネント数は200点以上あり、セットアップ時の「重厚感」とプレイ中の「手触り」が秀逸。
まさに、ビジュアル・機能美・テーマ表現が三位一体となったユーロゲームの完成形といえるでしょう。
5. 開発背景とデザイナーの哲学
『Ayar: Children of the Sun』のデザイナーは、
『Merv: The Heart of the Silk Road』や『Ragusa』で知られる ファビオ・ロピアーノ(Fabio Lopiano) と、
新進気鋭のデザイナー マンデラ・フェルナンデス=グランドン(Mandela Fernández-Grandon) の共同制作です。
ロピアーノは常に「歴史と人間の営みをメカニズムで再現する」ことをテーマにしており、
Ayarでは宗教・文明・倫理といった抽象的な概念を、
“二柱の神のバランスを取る”というユーロ的メカニズムで表現することに挑戦しています。
一方のフェルナンデス=グランドンは、南米の文化研究者としても知られ、
彼の監修により、インカ神話の設定や名称、地理的背景が高い考証精度で再現されています。
二人のコラボレーションによって、歴史的正確性とゲーム的抽象性の見事な調和が生まれたのです。
さらに、Osprey Games編集部は本作を「文明構築ゲームの新しい文脈」と位置づけており、
『Tawantinsuyu』『Teotihuacan』などの“中南米テーマユーロ”に連なる流れの中で、
“神話的ストラテジー”という新たな方向性を提示しています。
6. まとめ:文明と信仰の均衡を描く“神話体験型ユーロゲーム”
『Ayar: Children of the Sun』は、単なる戦略ボードゲームではありません。
それは、神々の思惑と人の知恵が交錯する“プレイアブルな神話”です。
プレイヤーはクランを導く指導者でありながら、同時に神々に試される存在。
太陽神と月神の両方を満足させるための選択は、
“人間はどのようにして信仰と文明の調和を保つのか”という普遍的テーマを内包しています。
アートワークの美しさ、メカニクスの奥深さ、
そして神話世界を盤上で再現する知的設計は、まさにOsprey Gamesの真骨頂。
中量級ユーロとしての完成度は非常に高く、
ユーロゲーマー、歴史テーマ愛好者、神話ファンのいずれにも強くおすすめできる一作です。
インカ神話の息吹を感じながら、自らの手で文明を築き上げる――。
『Ayar: Children of the Sun』は、“祈り”と“戦略”が見事に融合した、2025年を代表するアートユーロゲームです。


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